キャリアの子ども
HTLV-1キャリアの子ども
- 子どもにうつっている可能性はどれぐらいですか
- HTLV-1キャリアであることを知らずに母乳を与えてしまいましたが子どもにうつっている可能性はどれぐらいですか
- 子どもにHTLV-1をうつさないためにはどうしたらよいですか
- キャリアの妊婦から生まれた子どもについて気を付けることはありますか
- HTLV-1が子どもにうつっているかどうか調べたほうがよいですか
- 子どもにうつったかどうか、いつ頃わかりますか
- 子どもにうつっているか調べる場合、本人にどのように説明すればよいですか
- 子どもがHTLV-1に感染しているとわかりました。病気になる可能性はどれぐらいですか
- 子どもがHTLV-1に感染しているとわかりました。日常生活を送る上で気を付けることはありますか
- 子どもがHTLV-1に感染しているとわかりました。感染している子どもから兄弟姉妹へうつることはありませんか
- 子どもがHTLV-1に感染しているとわかりました。保育園や幼稚園、学校への入園・入学などを断られることはありませんか
- 子どもがHTLV-1に感染しているとわかりました。予防接種はどうしたらよいですか
- 子どもがHTLV-1に感染しているとわかりました。本人に伝えるべきでしょうか、伝えるとしたらいつがよいでしょうか。
- 子どもにうつっている可能性はどれぐらいですか
- どの栄養法を選択したかによります。
HTLV-1流行地域である長崎県のATLウイルス母子感染防止研究協力事業(APP)による追跡調査では、長期母乳栄養を行った場合の母子感染率20.5%(71/346名)に対して、完全人工栄養では2.4%(23/962名)に低下したことが示されています。
平成21年度の厚生労働省科学研究班(斎藤班)の報告では、HTLV-1の母子感染に関する過去の成績(1991年~2009年)を集計し、栄養法別の母から子への感染率が、①完全ミルクで3.3%(51/1553)、②短期母乳栄養1.9%(3/162)、③凍結母乳栄養3.1%(2/64)で、90日以上母乳を与える長期母乳栄養が17.7%(93/525)という結果でした。また令和1年度の厚生労働省科学研究班(板橋班)の報告では、全国92施設の協力を得て実施したコホート研究(2012年~2015年)から、栄養法別の母から子への感染率が、①完全ミルクで6.4%(7/110)、②短期母乳栄養2.3%(4/172)、③凍結母乳栄養5.3%(1/19)、90日以上母乳を与える長期母乳栄養が16.7%(2/12)という結果でした。 - HTLV-1キャリアであることを知らずに母乳を与えてしまいましたが子どもにうつっている可能性はどれぐらいですか
- 生後90日未満の短期間だけ母乳を与えた場合は約3%、生後90日以上の長期にわたって母乳を与えた場合は約20%の子どもが感染するといわれています。
- 子どもにHTLV-1をうつさないためにはどうしたらよいですか
- HTLV-1をうつさないためには、母乳を全く与えずミルクのみで赤ちゃんを育てることが最も有効な方法です。ただしこの方法を選択した場合でも約3%は赤ちゃんにHTLV-1がうつってしまうことが報告されており、これは胎盤からの感染を含む子宮内感染や産道感染などによるものと考えられています。生まれた後はHTLV-1に感染した細胞が生きたままの状態で大量に子どもの体内に入り込むことがない限り感染しないので、授乳以外の経路でHTLV-1が子どもにうつる可能性は非常に低いです。HTLV-1キャリアのお母さんから産まれた子どもでも、乳児期にHTLV-1に感染しなかった子どもは、一緒に暮らしていてもお母さんからHTLV-1がうつることはほぼありません。
- キャリアの妊婦から生まれた子どもについて気を付けることはありますか
- 母子感染予防を除いては注意することはありません。
- HTLV-1が子どもにうつっているかどうか調べたほうがよいですか
- お子さんにHTLV-1がうつっているかどうかは、実際に調べるか調べないかにかかわらず懸念事項だと思います。
HTLV-1感染を調べた結果、感染していないとわかった場合は、大きな安心感や達成感が得られ、妊娠中から抱え続けてきた不安を解消できるでしょう。
一方でHTLV-1に感染していることがわかった場合は、ショックが大きく、心理的な負担が増してしまうかもしれません。ただし、本人がHTLV-1キャリアであることを知っておくと、将来、献血や妊婦健診で突然自分がHTLV-1キャリアであると知らされるという事実に向き合う事態を避けることができます。また、万が一成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)の症状が現れた場合、HTLV-1キャリアであることがわかっていれば、短時間で原因の特定ができ、素早く適切な治療を受けられるというメリットもあります。しかしながら、思春期に向けてパートナーへ感染させてしまうことの不安などで悩んでしまうかもしれないというデメリットもあります。また今のところ、HTLV-1キャリアであることが判明しても受けられる治療がないという問題もあります。
子どものHTLV-1感染を調べるかどうかについては、ご家族で十分に相談したうえで決定してください。なお、必ずしも幼少期にHTLV-1感染を調べる必要はなく、お子さんがHTLV-1感染について理解できる年齢になってから本人と十分に相談し、本人の自由意思で調べることもできます。
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HTLV-1に詳しい医師の相談窓口(有料)はこちら - 子どもにうつったかどうか、いつ頃わかりますか
- 赤ちゃんは、生後半年ぐらいはお母さんからもらった抗体を持っているので(移行抗体といいます)、この時期に抗体検査をしても赤ちゃんに感染しているから陽性となったのか、お母さんからもらった抗体があるために陽性となったのか判断できません。また、赤ちゃんに感染していた場合、ウイルスに対する抗体がきちんとつくられるまでには2年以上かかる場合があると言われています。そのためHTLV-1に感染しているかどうかを正確に判定するためには、満3歳以降に検査を受けるとよいでしょう。
- 子どもにうつっているか調べる場合、本人にどのように説明すればよいですか
- HTLV-1のことを十分理解できる年齢になっている場合は、HTLV-1というウイルスのこと、お母さんが(場合によってはお父さんも)HTLV-1というウイルスに感染していること、お子さんにHTLV-1がうつっている可能性があること、HTLV-1に感染していても日常生活を送るうえでは問題はないこと、可能性としては少ないが、HTLV-1に感染していた場合、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)を疑う症状が現れた際に短時間で原因の特定ができ、素早く適切な治療を受けられるというメリットがあることなどを説明し、お子さんの将来のことを考えてHTLV-1がうつっているかどうかを調べておきたいというご家族の気持ちをそのままお子さんに説明してはどうでしょうか。一度には理解できないかもしれませんが、お子さんに真摯に向き合い説明を繰り返すことで、きっとご家族の気持ちも伝わるのではないかと思います。
- 子どもがHTLV-1に感染しているとわかりました。病気になる可能性はどれぐらいですか
- HTLV-1キャリアの約5%は成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)とよばれる血液の病気を、HTLV-1感染者の約0.3%はHTLV-1関連脊髄症(HAM)とよばれる神経の病気を発症します。また、HTLV-1キャリア10万人あたり90~110人がHTLV-1関連ぶどう膜炎(HU/HAU)という眼の病気を有していることが知られています。ATLは感染してから発症するまで50年程度かかるとされているので、幼児期にATLを発症することはまずありません。HAMは40歳代に発症することが多いですが、10歳代で発症する場合もありますので、歩き方がおかしい、走ると転びやすいなど気になる症状がある場合は、脳神経内科を受診してください。
- 子どもがHTLV-1に感染しているとわかりました。日常生活を送る上で気を付けることはありますか
- これまで通りの生活を送って大丈夫です。特別に注意することはありません。
- 子どもがHTLV-1に感染しているとわかりました。感染している子どもから兄弟姉妹へうつることはありませんか
- HTLV-1感染細胞が生きたままの状態で大量に体内に入り込むことがない限り感染しないので、兄弟姉妹間の通常の接触では感染しません。血液の付着した歯ブラシを共用しないなどの配慮はしたほうが良いと思われます。
- 子どもがHTLV-1に感染しているとわかりました。保育園や幼稚園、学校への入園・入学などを断られることはありませんか
- HTLV-1感染細胞が生きたままの状態で大量に体内に入り込むことがない限り感染しないので、日常生活では感染しません。そのため、HTLV-1感染を理由に保育園や幼稚園、学校への入園、入学を断ることはできませんし、HTLV-1キャリアであることを申告する義務もありません。万が一問題が発生した場合は、HTLV-1の専門家がいる病院へご相談下さい。
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HTLV-1に詳しい医師の相談窓口(有料)はこちら - 子どもがHTLV-1に感染しているとわかりました。予防接種はどうしたらよいですか
- 通常どおり接種してかまいません。
- 子どもがHTLV-1に感染しているとわかりました。本人に伝えるべきでしょうか、伝えるとしたらいつがよいでしょうか。
- お子さんにHTLV-1キャリアであることを伝えていなかった場合、将来、献血や妊婦健診で突然自分がHTLV-1キャリアであると知った際に、ショックを受け、不必要に悩んでしまうかもしれません。
一方で、お子さんにHTLV-1キャリアであることを伝えた場合、思春期に向けてパートナーへ感染させてしまうことの不安などで悩んでしまうかもしれません。また今のところ、HTLV-1キャリアであることが判明しても受けられる治療がないという問題もあります。しかしながら万が一、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)の症状が現れた場合、HTLV-1キャリアであることがわかっていれば、短時間で原因の特定ができ、素早く適切な治療を受けられるというメリットもあります。
それぞれにメリットとデメリットがありますので、お子さんに伝えるかどうかは、ご家族で十分に相談したうえで決定してください。伝える場合は、少なくともHTLV-1のことを十分理解できる年齢に達してからが望ましいと考えられます。
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