キャリアについて
HTLV-1キャリア
- HTLV-1キャリアとはなんですか
- どのようなHTLV-1キャリアがATLを発症しやすいですか
- どのようなHTLV-1キャリアがHAMを発症しやすいですか
- どのようなHTLV-1キャリアがぶどう膜炎(HU/HAU)を発症しやすいですか
- いつHTLV-1に感染したかを知ることはできますか
- HTLV-1キャリアはどのくらいいますか
- HTLV-1キャリアが多い地域はどこですか
- HTLV-1キャリアと判明した場合、どうしたらよいでしょうか
- HTLV-1キャリアと判明した場合、家族に伝えたほうがよいでしょうか
- HTLV-1キャリアと判明した場合、家族も調べたほうがよいでしょうか
- HTLV-1キャリアが日常生活で気を付けることはありますか
- HTLV-1キャリアが子どもをつくることができますか
- HTLV-1キャリアは献血ができますか
- HTLV-1キャリアは臓器移植ができますか
- HTLV-1キャリアは造血幹細胞移植ドナーになれますか
- HTLV-1キャリアは献体ができますか
- HTLV-1キャリアで関節リウマチにかかっています。気を付けることはありますか
- 家族がHTLV-1キャリアと判明した場合、自分も調べたほうがよいでしょうか
- 以前献血をした際には何もいわれなかったのに、今回HTLV-1陽性の通知を受け取ったのはなぜでしょうか
- HTLV-1キャリアと判明した場合、定期的に病院で検査を受ける必要がありますか
- ATLやHAMを発症しないか心配ですが、どうしたらよいですか
- 新型コロナウイルスなどのワクチン接種を受けてもよいですか
- HTLV-1キャリアとはなんですか
- インフルエンザウイルスなどとは違って、HTLV-1の場合は感染していても特に症状はありません。HTLV-1感染者の約95%は、生涯にわたりHTLV-1感染が原因となって起こる病気を発症せず、感染していない人と同じように生活することができます。無症状のままHTLV-1というウイルスを持続的に保有している人のことを「HTLV-1キャリア」とよびます。
一方で、HTLV-1キャリアの一部の人は、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、HTLV-1ぶどう膜炎(HU/HAU)などの病気を発症します。 - どのようなHTLV-1キャリアがATLを発症しやすいですか
- 体の中のHTLV-1感染細胞の数(プロウイルス量)は、通常、HTLV-1が感染を広げようとする力と、体がもともと持つ免疫の力とのバランスで一定に保たれています。
しかしながら、何かのきっかけでHTLV-1感染細胞のゲノムに変異などが起こると、HTLV-1感染細胞は自発的に増殖するようになります。このように自発的に増殖するようになった細胞(クローナルな細胞といいます)は「がん化」しやすく、さらにゲノムの変異が蓄積してHTLV-1感染細胞ががん化した状態になるとATLを発症します。そのためクローナルな細胞が増えてきている場合は、ATLを発症するリスクが高いと考えられています。これまでの研究で感染細胞の割合が単核球(リンパ球と単球)の4%以上の方々がATLを発症する危険が高いと報告されています。ゲノムに変異を引き起こすよく知られた原因としては喫煙が知られていますが、HTLV-1キャリアでも、喫煙者にATL発症リスクが高いことが知られています。また、家系内にATLを発症した方がいる場合もATLの発症リスクが高いことがわかっています。 - どのようなHTLV-1キャリアがHAMを発症しやすいですか
- HAM患者ではHTLV-1キャリアに比べるとHTLV-1感染細胞の数(プロウイルス量)が多いので、HTLV-1感染細胞数が高いHTLV-1キャリアは、HAMの発症リスクが高いといわれています。HTLV-1感染細胞の増え方には、一つの感染細胞が増えるモノクローナルな増殖と、様々な感染細胞が増えるポリクローナルな増殖といった2つの様式がありますが、HAMの発症リスクが高いキャリアは、ポリクローナルな増殖をしている特徴があります。
またHAMは、免疫が活性化しているという特徴があります。免疫は本来、体の中に外敵が侵入してきた際に攻撃してくれる重要な役割を果たしていますが、その機能が暴走(活性化)しすぎると自分の体を攻撃してしまうことがあります。この免疫の機能を決定する要因として、白血球の型(HLA:Human Leukocyte Antigen)が重要であることはよく知られていますが、特定の白血球の型を保有しているHTLV-1キャリアはHAMの発症リスクが高いことが知られています。
その他にも、腎臓移植などの臓器移植でHTLV-1に初めて感染すると、移植後に数年でHAMを高率に発症するリスクがあることが分かっています。そのため、腎臓移植の際は臓器を提供する方(ドナー)と臓器の提供を受ける方(レシピエント)のHTLV-1抗体検査を移植前に実施し、HTLV-1感染ドナーから非感染レシピエントへの移植は、原則実施しないように推奨されています。 - どのようなHTLV-1キャリアがぶどう膜炎(HU/HAU)を発症しやすいですか
- HTLV-1関連ぶどう膜炎(HU/HAU)の患者ではキャリアに比べるとHTLV-1感染細胞の数(プロウイルス量)が多いので、HTLV-1感染細胞数が高いHTLV-1キャリアは、HU/HAUの発症リスクが高いといわれています。
また重要なことに、HTLV-1キャリアがバセドウ病(甲状腺機能亢進症)を発症して、チアマゾール(商品名:メルカゾール)の治療を受けた後に、HU/HAUを発症するリスクが高いことが知られています。 - いつHTLV-1に感染したかを知ることはできますか
- HTLV-1に感染しても感染直後に特徴的な症状が現れることはありませんので、定期的にHTLV-1の抗体検査をしない限り、いつ感染したのかを知るのは困難です。
- HTLV-1キャリアはどのくらいいますか
- 平成21年の厚生労働省科学研究班(山口班)の全国調査によると、HTLV-1 の感染者(キャリア)数は約 108 万人以上と推定されています。また平成26年の日本医療研究開発機構(AMED)研究班(浜口班)の調査では、約72~82万人と推定されています。つまり国民の約100~150人に1人はHTLV-1キャリアであると推定されています。
- HTLV-1キャリアが多い地域はどこですか
- もともと九州・沖縄地方に多く、西高東低であることが知られていましたが、近年では人口の大都市圏への移動、集中にともなって大都市圏で増加傾向にあります。日本以外では、カリブ海沿岸、中南米、アフリカなどに多く、最近ではオーストラリアの先住民族にも多いことが明らかになりました。
- HTLV-1キャリアと判明した場合、どうしたらよいでしょうか
- 日常生活を送る上では、授乳や性行為を除いて基本的に他人にうつすことはありませんので、周囲の人にあなたがHTLV-1キャリアであることを伝える必要はありません。
妊娠中の方は、出産後、母乳で赤ちゃんを育てるとHTLV-1をうつしてしまう恐れがあります。どのような栄養方法で赤ちゃんを育てるか、出産前によく考えておいた方がよいので、パートナーやかかりつけの産婦人科医、助産師、HTLV-1に詳しい医師などとよく相談しましょう。
性行為による水平感染はコンドームを使用することでほぼ防ぐことができます。子どもを持つことを希望している場合には、まずパートナーと十分に話し合ってお互いの意思を確認してください。場合によってはHTLV-1に詳しい医師を交えて相談してみてください。 また、HTLV-1キャリアの約5%は成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)とよばれる血液の病気を、HTLV-1感染者の約0.3%はHTLV-1関連脊髄症(HAM)とよばれる神経の病気を発症します。また、HTLV-1キャリア10万人あたり90~110人がHTLV-1関連ぶどう膜炎(HU/HAU)という眼の病気を有していることが知られています。これらの病気を疑って病院を受診する際には、あなたがHTLV-1キャリアであることを伝えると、早期診断に役立つ場合があります。かかりつけ医がいる場合には、あなたがHTLV-1キャリアであることを伝えておいたほうがよいかもしれません。HTLV-1キャリアは病気を発症しているわけではありませんので、大きく心配する必要はありませんが、不安になってしまうこともあると思います。疑問や不安がある場合は、HTLV-1電話相談窓口を活用したり、 HTLV-1に詳しい医師に相談してみるのもよいかもしれません。
HTLV-1電話相談窓口(無料)はこちら
HTLV-1に詳しい医師の相談窓口(有料)はこちら
日本HTLV-1学会登録医療機関はこちら - HTLV-1キャリアと判明した場合、家族に伝えたほうがよいでしょうか
- あなたがHTLV-1キャリアの場合、ご家族の中にもHTLV-1キャリアがいる可能性があります。ご家庭の状況にもよりますので家族に伝えるべきかどうかは、あなたがどうしたいかによりますが、判断に迷う場合は、HTLV-1電話相談窓口を活用したり、HTLV-1に詳しい医師に相談してみるのもよいかもしれません。
HTLV-1電話相談窓口(無料)はこちら
HTLV-1に詳しい医師の相談窓口(有料)はこちら
日本HTLV-1学会登録医療機関はこちら - HTLV-1キャリアと判明した場合、家族も調べたほうがよいでしょうか
- 妊婦さんや臓器移植を予定している方については、陽性であった場合に次の行為に影響しますので調べる必要がありますが、それ以外の方については検査することを原則推奨していません。ご家族がHTLV-1に感染しているかどうかを知りたいと希望している場合には、調べてもよいでしょう。しかしながら、ご家族が希望していない場合には、ご家族が感染を調べて陽性となった場合のことを考える必要があります。判断に迷う場合は、HTLV-1電話相談窓口を活用したり、HTLV-1に詳しい医師に相談してみるのもよいかもしれません。
HTLV-1電話相談窓口(無料)はこちら
HTLV-1に詳しい医師の相談窓口(有料)はこちら
日本HTLV-1学会登録医療機関はこちら - HTLV-1キャリアが日常生活で気を付けることはありますか
- 基本的に授乳や性行為を除いて他人にうつすことはありませんので、HTLV-1に感染していてもこれまでと同じように生活を送ることができます。ただし、血液が付着した歯ブラシやかみそりを共用することは避けましょう。性行為による水平感染はコンドームを使用することでほぼ防ぐことができます。
- HTLV-1キャリアが子どもをつくることができますか
- できます。HTLV-1に感染していても妊娠や分娩に影響を及ぼすことはありません。また、HTLV-1感染が原因で赤ちゃんに生まれつきの障がいが生じたり、産まれた後に異常を起こしたりすることもありません。また出産後に母乳ではなくミルクで育てれば97%程度の赤ちゃんにうつさないようにすることができます。子どもを持つことを希望している場合には、まずパートナーと十分に話し合ってお互いの意思を確認してください。場合によってはHTLV-1電話相談窓口を活用したり、HTLV-1に詳しい医師に相談してみてください。
HTLV-1電話相談窓口(無料)はこちら
HTLV-1に詳しい医師の相談窓口(有料)はこちら - HTLV-1キャリアは献血ができますか
- 輸血を受ける方への感染を防ぐため、HTLV-1キャリアの方の血液は輸血に使用できないことになっております。ご厚意に沿えず申し訳ございませんが、今後の献血はご遠慮ください。
- HTLV-1キャリアは臓器移植ができますか
- HTLV-1キャリアが臓器を提供する(ドナーになる)場合、臓器の提供を受ける相手が移植前に感染していないと、HTLV-1をうつしてしまう可能性があります。日本国内の死体移植については、HTLV-1キャリアからの臓器提供が禁止されています。生体移植については、膵臓移植ではHTLV-1キャリアからの臓器提供は禁止されています。また腎移植については、HTLV-1キャリアから非感染者への移植は原則禁止となっています。それ以外の臓器については明確に規定されていません。
一方、HTLV-1キャリアが臓器の提供を受ける(レシピエントとなる)場合、死体・生体移植ともに明確な規定はないため、各移植施設の判断にゆだねられているのが現状です。 - HTLV-1キャリアは造血幹細胞移植ドナーになれますか
- 家族の中に成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)を発症した方がいる場合、条件を満たせばその方への造血幹細胞移植のドナーになることができます。
- HTLV-1キャリアは献体ができますか
- 献体については機関によって可能な場合と不可能な場合がありますので、献体を考えている機関の受付窓口に問い合わせてください。
- HTLV-1キャリアで関節リウマチにかかっています。気を付けることはありますか
- HTLV-1キャリアが多い地域では、関節リウマチ患者さんの中に、よりHTLV-1キャリアが多いことが報告されています。ただし、HTLV-1が直接関節リウマチを引き起こす原因ウイルスであるとは考えられていません。
HTLV-1キャリアの関節リウマチ患者が、そうでない関節リウマチ患者と病態や予後、薬の効き方などに違いがあるのかは、まだはっきりとわかっていません。また、これまでに関節リウマチの治療でHTLV-1感染細胞数(プロウイルス量)が変化したという報告も少ないことから、HTLV-1キャリアであっても、通常の関節リウマチの治療を行うことができるといえます。ただし、すでにATLを発症している場合は関節リウマチの治療方針に影響を与えるので、関節リウマチの治療を始める前に、ATLを発症していないか確認することは重要です。また通常のHTLV-1キャリアの方と同様に、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL), HTLV-1関連脊髄症(HAM)やHTLV-1ぶどう膜炎(HU/HAU)を発症する可能性はあるので、その点にも注意が必要です。 - 家族がHTLV-1キャリアと判明した場合、自分も調べたほうがよいでしょうか
- 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)を疑う症状がなければ、HTLV-1に感染しているかどうかを知るメリットはあまり大きくないかもしれません。ただし、万が一これらの病気の症状が現れた場合、HTLV-1感染がわかっていれば、短時間で原因の特定ができ、素早く適切な治療を受けられるというメリットがあります。
HTLV-1感染を調べ、結果が「陽性」となった場合のことをよく考えてみて、あなたがHTLV-1への感染を知りたいかどうか、という気持ちを大切にして検査を受けるかどうかを決めてください。 - 以前献血をした際には何もいわれなかったのに、今回HTLV-1陽性の通知を受け取ったのはなぜでしょうか
- 平成11年より前は、献血者に対してHTLV-1感染を通知していなかったので、これ以前の献血であった場合にはこの理由が考えられます。また、献血の際の問診票で「検査結果の通知を希望する」にチェックを入れていない場合には、通知は届きません。それ以外には、以前の献血から今回の献血の間に新たに感染した可能性も考えられます。
- HTLV-1キャリアと判明した場合、定期的に病院で検査を受ける必要がありますか
- 全てのHTLV-1キャリアが必ずしも定期的に検査を受ける必要はありません。
ただし、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)のくすぶり型や慢性型の状態である場合は自覚症状がないことが多く、血液検査を実施しないと判明しません。そのためHTLV-1キャリアと判明したら(特に40歳以上)、一度はHTLV-1の診療を専門とする医療機関で検査をしても良いでしょう。万が一、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)のくすぶり型や慢性型の状態であることが判明した場合は、定期的に病院で検査を受ける必要があります。
またHTLV-1キャリアの中で、血液中におけるHTLV-1感染細胞数(プロウイルス量)が高い方は、ATLやHAM、HU/HAUの発症リスクが高いと思われます。その場合も、これら疾患の初期症状の有無に注意しながら定期的に(頻度は低くなりますが)病院を受診しても良いと思います。HTLV-1感染細胞数(プロウイルス量)の検査は、現時点(2022年)で保険適用されていないため、どこの病院でも検査できるわけではありません。JSPFAD(HTLV-1感染者コホート共同研究班)の実施医療機関あるいは日本HTLV-1学会登録医療機関では、研究としてHTLV-1プロウイルス量を測定することができますので、検査を希望する場合にはこれらの医療機関にお問い合わせください。
JSPFAD実施医療機関はこちら
日本HTLV-1学会登録医療機関はこちら - ATLやHAMを発症しないか心配ですが、どうしたらよいですか
- 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)を発症するのはHTLV-1キャリアのごく一部で、ほとんどのHTLV-1キャリアは生涯発症することなく過ごしています。それでも自分はATLやHAMを発症するのではないか、いつATLやHAMを発症するのだろうかと不安がある場合には、HTLV-1電話相談窓口を活用したり、HTLV-1に詳しい医師に相談してみてください。
HTLV-1電話相談窓口(無料)はこちら
HTLV-1に詳しい医師の相談窓口(有料)はこちら - 新型コロナウイルスなどのワクチン接種を受けてもよいですか
- 新型コロナウイルスや肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンなどのワクチン接種を受けても問題ありません。