ウイルスの検査/HTLV-1感染の検査
ウイルスの検査/HTLV-1感染の検査
- HTLV-1の感染はどのように調べることができますか
- 一次検査/スクリーニング検査とはなんですか
- 確認検査とはなんですか
- 判定保留とはどういうことですか
- 偽陽性とはなんですか
- HTLV-1の感染を調べるための検査はどこで受けることができますか
- HTLV-1の感染を調べるための検査にどれくらい費用がかかりますか
- どのような場合にHTLV-1の感染の有無を調べる抗体検査を行いますか
- 献血をするとHTLV-1の感染がわかるのですか
- どのような場合にHTLV-1の抗体検査を受けたほうがよいですか
- HTLV-1のプロウイルス量や感染細胞率とはなんですか
- HTLV-1のプロウイルス量(感染細胞率)はどこで測定できますか
- HTLV-1に感染したかもしれないと思ったときに、いつ検査に行けばよいですか
- HTLV-1の感染はどのように調べることができますか
- HTLV-1に感染しているかどうかを調べるには、血液中にHTLV-1に対する抗体があるかどうかを調べることによって行われます。HTLV-1に感染すると、体にもともと備えられている防御機構である免疫によりHTLV-1に対する抗体が作られ、体の中からHTLV-1を排除しようとします。そのため血液中にHTLV-1に対する抗体がある人はHTLV-1に感染しているといえるのです。
抗体検査はまず一次検査/スクリーニング検査を行います。一次検査/スクリーニング検査で陽性となった場合、偽陽性(感染していないのに陽性となること)であることがありますので、確認検査を行います。この確認検査により血液中に抗HTLV-1抗体があることが確定した場合、HTLV-1感染と診断されます。妊婦健診や献血の際の検査で「陽性」と通知された場合は、全て「確認検査陽性」という意味です。
一次検査/スクリーニング検査には、化学発光酵素免疫測定(CLEIA)法、化学発光免疫測定(CLIA)法と電気化学発光免疫測定(ECLIA)法、粒子凝集(PA)法があり、確認検査にはラインブロット(LIA)法と2018年まで行われていたウエスタンブロット(WB)法があります。ごくまれにこの確認検査で抗HTLV-1抗体があるかどうかが確定できず、判定保留となる場合があります。判定保留となった場合は、HTLV-1核酸検出(PCR)法により血液中の細胞のゲノムDNAの中にHTLV-1のプロウイルスがあるかどうかを調べることでHTLV-1感染の有無がわかります。なおHTLV-1核酸検出(PCR法)は、確認検査で判定保留になった妊婦と生体臓器移植の対象者に対してのみ保険適用されています。
また、HTLV-1に感染した直後は、抗体検査で正しい結果が出ない場合(感染していても陰性となること)があります。新たに感染したのではないかと不安がある場合は、数ヶ月後に再度抗体検査を受けてみてください。 - 一次検査/スクリーニング検査とはなんですか
- 血液中にHTLV-1に対する抗体があるかどうかを調べる最初の抗体検査のことをいいます。一次検査/スクリーニング検査では、感染している可能性のある人をできるだけ拾い上げることを重視していますので、本当は感染していないのに陽性という結果が出てしまう場合があります。一次検査/スクリーニング検査で陽性となった人は、もう一度、確認のための抗体検査を行いますので、最初の抗体検査のことを一次検査/スクリーニング検査といいます。
一次検査/スクリーニング検査には、化学発光酵素免疫測定(CLEIA)法、化学発光免疫測定(CLIA)法と電気化学発光免疫測定(ECLIA)法、粒子凝集(PA)法があります。 - 確認検査とはなんですか
- 血液中にHTLV-1に対する抗体があるかどうかを調べる一次検査/スクリーニング検査で陽性となった人すべてがHTLV-1に感染しているわけではありません。そのため本当に感染しているかどうかを調べるために、もう一度、確認のための抗体検査を行います。これを確認検査といいます。
確認検査には、ラインブロット(LIA)法と2018年まで行われていたウエスタンブロット(WB)法があります。現在(2022年)、日本ではラインブロット(LIA)法のみが用いられています。妊婦健診や献血の際の検査で「陽性」と通知された場合は、全て「確認検査陽性」という意味です。 - 判定保留とはどういうことですか
- ごくまれに確認検査で抗HTLV-1抗体があるかどうかが確定できない場合があり、これを判定保留といいます。このような場合は、HTLV-1核酸検出(PCR)法により、血液の細胞由来のゲノムDNAの中にHTLV-1のプロウイルスがあるかどうかを調べることでHTLV-1感染の有無がわかります。なおHTLV-1核酸検出(PCR)法は、確認検査で判定保留になった妊婦と生体臓器移植の対象者に対してのみ保険適用されています。
- 偽陽性とはなんですか
- HTLV-1の抗体検査では、一次検査/スクリーニング検査で陽性となった人すべてがHTLV-1に感染しているわけではありません。一次検査/スクリーニング検査では感染している可能性のある人をできるだけ拾い上げることを重視していますので、本当は感染していないのに検査で陽性という結果が出てしまう場合があります。このような場合を「偽陽性」とよびます。
令和2年の日本産婦人科医会の調査では、一次検査/スクリーニング検査で陽性となって確認検査を受けた1,274人のうち、本当にHTLV-1に感染していた人は581人(45.6%)でした。確認検査でも結果が確定せず判定保留となった人は89人(7.0%)、残りの604人(47.4%)はHTLV-1には感染していない偽陽性であることが報告されています。偽陽性者の割合は、地域によって異なりますが決して少ない数ではありません。 - HTLV-1の感染を調べるための検査はどこで受けることができますか
- 妊娠中の方は妊婦健診の項目にHTLV-1抗体検査が含まれていますので、かかりつけの産婦人科で検査を受けます。それ以外の方は、一部の保健所や医療機関で検査を受けることが可能です。実施状況は地域によって異なりますので、お住まいの地域の保健所や検査を希望する医療機関にお問い合わせください。
HTLV-1感染の検査は、日本HTLV-1学会が認定した日本HTLV-1学会登録医療機関でも受けることができます。
日本HTLV-1学会登録医療機関はこちら - HTLV-1の感染を調べるための検査にどれくらい費用がかかりますか
- 妊婦健診で受けるHTLV-1抗体の一次検査/スクリーニング検査は公費負担(無料)です。保健所や医療機関で受ける検査費用は検査を受ける場所によって異なりますので、お住まいの地域の保健所や検査を希望する医療機関にお問い合わせください。
- どのような場合にHTLV-1の感染の有無を調べる抗体検査を行いますか
- 妊婦健診、献血時、臓器移植時にHTLV-1抗体検査を行います。また、HTLV-1感染が原因となって起こる病気である成人T細胞性白血病・リンパ腫(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、HTLV-1ぶどう膜炎(HU/HAU)を疑う場合にもHTLV-1抗体検査を行います。その他、検査を希望する場合には、一部の保健所や医療機関で検査を受けることができます。
- 献血をするとHTLV-1の感染がわかるのですか
- 以前は輸血によるHTLV-1感染があったため、昭和61年以降は、献血された血液がHTLV-1に感染していないかを検査して確認するようになりました。この検査で陽性であった場合、希望者には本人に結果が通知されます。ただし、献血された血液は輸血を必要とする患者さんへの使用を前提としていますので、HTLV-1感染検査を目的として献血をすることは避けてください。
- どのような場合にHTLV-1の抗体検査を受けたほうがよいですか
- HTLV-1感染が原因となって起こる病気である成人T細胞性白血病・リンパ腫(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、HTLV-1ぶどう膜炎(HU/HAU)が疑われる場合には、HTLV-1抗体検査を受けたほうがよいでしょう。
また近親者のHTLV-1感染が確認された場合、ATLやHAMを疑う症状がなければ、HTLV-1に感染しているかどうかを知るメリットはあまり大きくないかもしれません。ただし、万が一これらの病気の症状が現れた場合、HTLV-1感染がわかっていれば、短時間で原因の特定ができ、素早く適切な治療を受けられるというメリットがあります。
HTLV-1感染を調べ、感染していることが判明した場合のことをよく考えてみて、あなたがHTLV-1への感染を知りたいかどうか、という気持ちを大切にして検査を受けるかどうかを決めてください。
妊娠・出産を希望している人はHTLV-1に感染していた場合、赤ちゃんへの感染予防を考える必要がありますので、調べておいたほうがよいでしょう。現在(2022年)、HTLV-1抗体検査の一次検査/スクリーニング検査は妊婦健診で公費助成検査項目となっており、原則実施されるようになっています。 - HTLV-1のプロウイルス量や感染細胞率とはなんですか
- 体の中にどれくらいのウイルスが存在するかを数字で表したものを「ウイルス量」と呼びます。HTLV-1の場合は、血漿中にウイルス粒子を検出することができないため、ウイルスに感染している細胞の数をウイルス量として表しています。HTLV-1は、感染すると細胞のゲノム(DNA)に「プロウイルス」として組み込まれます。基本的に1個のHTLV-1感染細胞に組み込まれているプロウイルスは一つなので、「プロウイルスの数=感染細胞の数」となります。そのため血液中に感染細胞がどのくらい存在するのかは、血液中にいくつのプロウイルスがあるかを調べることでわかります。一般的に血液の単核球(リンパ球と単球)中に含まれるプロウイルス(HTLV-1遺伝子)の数を測定したものをプロウイルス量や感染細胞率といい、単核球100個あたりのプロウイルスのコピー数(コピー/100細胞)や感染細胞の比率(%)として表現します。
- HTLV-1のプロウイルス量(感染細胞率)はどこで測定できますか
- HTLV-1のプロウイルス量測定は保険適用されていないため、どこの病院でも検査できるわけではありません。
JSPFAD(HTLV-1感染者コホート共同研究班)の実施医療機関では、研究への参加に同意いただけた場合にHTLV-1のプロウイルス量を測定することができます。また日本HTLV-1学会が認定した日本HTLV-1学会登録医療機関でも受けることができます。
JSPFAD実施医療機関はこちら
日本HTLV-1学会登録医療機関はこちら - HTLV-1に感染したかもしれないと思ったときに、いつ検査に行けばよいですか
- 抗体を検査の対象とする場合には感染から一定期間が経過しなければ検出できない時期 (ウインドウピリオド) があります。HTLV-1の感染については米国での輸血感染事例でのウインドウピリオドは約44~51日、日本での自然感染例におけるウインドウピリオドは約66日程度との報告があります。そのため針刺し事故等での追跡調査は1,3,6か月後の検査を実施することを規定する施設もあります。