HTLV-1基礎知識Q&A
妊婦健診での検査
- なぜ妊婦健診の血液検査でHTLV-1に感染しているかどうかを調べるのですか
- 妊婦健診のHTLV-1抗体検査はいつごろ行うのですか
- HTLV-1抗体検査にどれくらい費用がかかりますか
- 一次検査/スクリーニング検査とはなんですか
- 確認検査とはなんですか
- 判定保留とはどういうことですか
- HTLV-1感染が判明しましたが無事出産できますか
- HTLV-1感染が判明しましたが夫に相談すべきでしょうか
- 前回の妊娠時にHTLV-1抗体検査をしましたが今回も必要なのでしょうか
- 前回の妊娠時にはHTLV-1抗体検査をせず今回HTLV-1感染が判明しました。上の子は母乳で育てましたが心配はないでしょうか
- なぜ妊婦健診の血液検査でHTLV-1に感染しているかどうかを調べるのですか
- 妊婦がHTLV-1キャリアであることがわかった場合、適切な予防対策を行うことで、母親から子どもへの感染をできる限り防ぐことができるからです。子どもが感染しなければ、将来、HTLV-1感染が原因となって起こる病気を発症することもありませんし、その次の世代への伝播も防ぐことができます。
母子感染予防対策により、平成22年HTLV-1抗体検査の一次検査/スクリーニング検査が妊婦健診の公費助成検査項目に追加され、翌平成23年には産婦人科診療ガイドラインにおいて、妊婦に対するHTLV-1抗体検査の推奨レベルがA(強く推奨する)に引き上げられました。これにより、全国の妊婦がHTLV-1抗体検査を受けるようになりました。 - 妊婦健診のHTLV-1抗体検査はいつごろ行うのですか
- 妊娠30週までに検査します。
- HTLV-1抗体検査にどれくらい費用がかかりますか
- 妊婦健診で受けるHTLV-1抗体検査の一次検査/スクリーニング検査は公費負担なので自己負担はありません。この一次検査/スクリーニング検査で陽性となった場合には確認検査あるいはPCR検査を行う必要がありますが、確認検査やPCR検査は保険の範囲内で実施するため、その一部(1~3割)を自己負担する必要があります。
- 一次検査/スクリーニング検査とはなんですか
- 血液中にHTLV-1に対する抗体があるかどうかを調べる最初の抗体検査のことをいいます。一次検査/スクリーニング検査では、感染している可能性のある人をできるだけ拾い上げることを重視していますので、本当は感染していないのに陽性という結果が出てしまう場合があります。一次検査/スクリーニング検査で陽性となった人は、もう一度、確認のための抗体検査を行いますので、最初の抗体検査のことを一次検査/スクリーニング検査といいます。
一次検査/スクリーニング検査には、化学発光酵素免疫測定(CLEIA)法、化学発光免疫測定(CLIA)法と電気化学発光免疫測定(ECLIA)法、粒子凝集(PA)法があります。 - 確認検査とはなんですか
- 血液中にHTLV-1に対する抗体があるかどうかを調べる一次検査/スクリーニング検査で陽性となった人すべてがHTLV-1に感染しているわけではありません。そのため本当に感染しているかどうかを調べるために、もう一度、確認のための抗体検査を行います。これを確認検査といいます。
確認検査には、ラインブロット(LIA)法と2018年まで行われていたウエスタンブロット(WB)法があります。現在(2022年)、日本ではラインブロット(LIA)法のみが用いられています。妊婦健診で「陽性」と通知された場合は、全て「確認検査陽性」という意味です。 - 判定保留とはどういうことですか
- ごくまれに確認検査で抗HTLV-1抗体があるかどうかが確定できない場合があり、これを判定保留といいます。このような場合は、HTLV-1核酸検出(PCR)法により、血液の細胞由来のゲノムDNAの中にHTLV-1のプロウイルスがあるかどうかを調べることでHTLV-1感染の有無がわかります。なおHTLV-1核酸検出(PCR)法は、確認検査で判定保留になった妊婦と生体臓器移植の対象者に対してのみ保険適用されています。
- HTLV-1感染が判明しましたが無事出産できますか
- HTLV-1に感染していても妊娠や分娩に影響を及ぼすことはありません。また、HTLV-1感染が原因で赤ちゃんに生まれつきの障がいが生じることもありません。
- HTLV-1感染が判明しましたが夫に相談すべきでしょうか
- ご夫婦の状況によりますので正解はありませんが、できれば相談したほうがよいのではないでしょうか。HTLV-1は親の意思で子どもへの感染を防ぐことができますし、子どものHTLV-1感染検査をどうするかなど、子どもの成長につれ悩むことが出てくると思います。子どもの将来はご夫婦でよく相談しながら決めていったほうがよいと思いますし、あなたの悩みや不安を聞いてもらうこともできます。あなたがどうしたいかをよく考えて相談してみてはいかがでしょうか。
- 前回の妊娠時にHTLV-1抗体検査をしましたが今回も必要なのでしょうか
- 前回の妊娠時にHTLV-1抗体検査で陰性であっても、前回の妊娠後に感染している可能性がありますので検査が必要です。前回の妊娠時にHTLV-1抗体検査で陽性だった人は、今回も陽性となりますので検査は必要ありませんが、HTLV-1抗体検査の一次検査/スクリーニング検査は妊婦健診の公費助成検査項目に含まれているので、実際は検査を受けることになります。
- 前回の妊娠時にはHTLV-1抗体検査をせず今回HTLV-1感染が判明しました。上の子は母乳で育てましたが心配はないでしょうか
- 上のお子さんは感染している可能性があります。心配なようでしたら胎児の間にお母さんから受け取ったHTLV-1抗体の影響が消える3歳を過ぎてからHTLV-1抗体検査を受けることで感染しているかどうかを調べることができます。検査を希望される場合には、受診したい医療機関(小児科)へ検査可能か事前に確認されることをお勧めします。