HTLV-1について
みなさまの不安や疑問を少しでも解消していただくために、このページを作成しました。お読みいただき、健康管理にお役立てください。
このサイトで、HTLV-1を初めてお知りになった方も多いと思ます。 HTLV-1(エイチ・ティ・エル・ブイ・ワンと呼びます)は、インフルエンザウイルスや肝炎ウイルスなどと同様に、ひとに感染するウイルスの一つです。古くから日本にあるウイルスで、このウイルスに感染していても病気になるとは限りません。
HTLV-1の感染が分かって、心配なことがたくさんあると思います。
気になっていることをいっしょに尋ねてみましょう。
HTLV-1って何?
あの~、HTLV-1の検査で陽性だったそうです。
「HTLV-1」って何ですか?
HTLV-1というのは、
Human T-cell Leukemia Virus type 1
ヒトT細胞白血病ウイルス1型の略称です。
HTLV-1は、何千年も前から人類と共存してきたといわれるウイルスで、体の中では、血液の中にある白血球のうち、主にT細胞に感染します。
最初に白血病の患者さんから見つかったので、その原因ウイルスとして命名されました。
HTLV-1の検査
どうやって、HTLV-1の感染が分かったのですか。
HTLV-1の感染を調べるには、感染したら体の中で作られるHTLV-1に対する抗体があるかどうかについて検査します。
この検査で陽性の場合は、HTLV-1に感染していると考えられます。
感染した方のことをキャリアといいます。
2012年の報告では、日本全体で約108万人のキャリアがいることがわかりました。
1990年代の調査では、西南日本にキャリアが集中している、とされていましたが、最近では大都市圏にもキャリアが多くなってきています。
HTLV-1の感染
私は、どうやって感染したのでしょうか。
HTLV-1の感染は、感染した細胞が生きたまま大量に体内に入ることで起こります。
主な感染経路としては、3つがわかっています。
判明している感染経路
- 母子感染 :主に母乳(母親から子供への感染)
- 性感染 :体液(パートナー間の感染)
- 医原性感染:輸血・臓器移植
国内の輸血用血液製剤は1986年からすべてHTLV-1の検査を行っており、現在、輸血による感染はありません。 主な感染経路は、母子感染と性感染です。
私がキャリアなら、家族に感染させていないか、心配です。
HTLV-1は、感染する力がとても弱く、ウイルスに感染した細胞が生きたまま 大量に体に入らないと感染しません。
授乳と性交渉(セックス)を除けば、普通の家庭生活において感染することはありません。
普通の家庭生活や、学校・職場等の環境で感染することはありません。
衣類や食器の共用や銭湯、プールなどの日常生活で感染することはないといわれています。また、くしゃみや咳などでも感染しません。
私は、母乳で子供を育てました。
子供は感染していますか。
お母さんがキャリアの場合、母乳を飲んだお子さんに感染することがあります。
母子感染は、母乳を介した感染が大部分で、長期にわたって母乳を与えた場合、子供の約20%に感染するといわれています。
生まれてくる子にうつさないためにはどうしたらよいですか。
完全に母乳を断って人工ミルクで育てることにより、感染を 97%程度防止することが可能です。
授乳方法の選択については、産婦人科でご相談ください。
夫にうつしていないでしょうか。
妻にうつしていないでしょうか。
日本全国で1年間に数千人の新たな感染が生じていると言われ、男性の感染よりも女性の感染の方が3倍くらい多いと推測されています。
しかし、パートナーであっても必ずしも感染するものではありません。また、もし感染しても、すぐに健康上の問題が起こるわけでもありません。
パートナー間の感染を防ぐことはできますか。
子供を持つことはできますか。
一度の性交渉で感染してしまうというものではありません。
性交渉による感染はコンドームを使用することで予防でき、キスや唾液による感染はありません。
妊娠・出産を望む場合は、通常の性交渉を行ってください。
性交渉による感染のように、成人してから感染した方が成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)を発症することは極めてまれです(世界で数例)。
最近では、若年層(16-34歳)でのHTLV-1新規感染者が増えているという報告があります。
感染予防には適切なコンドーム使用が効果的です。
HTLV-1関連疾患
HTLV-1に感染していて病気にはなりませんか。
HTLV-1の感染が原因で起こる疾患は、主に次の3つです。
- 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)
- HTLV-1関連脊髄症(HAM)
- HTLV-1関連ぶどう膜炎(HU)
どの位の人が病気になるのですか。
それぞれの疾患を発症するのは
- ATLはキャリアのうちの3~5%
- HAMはATLの10分の1以下
- HUはHAMと同じ位の頻度
と推定されています。
HTLV-1に感染していてもほとんどの方は生涯発症することはありません。
しかし、次の症状が認められる場合は、医療機関の受診をおすすめします。
1.成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)
感染した血液細胞が腫瘍化(がん化)する疾患です。
<ATLが疑われる症状>
- 体のあちこちのリンパ節が腫れる
- 皮膚の赤い発疹や盛り上がった発疹がなかなか治らない
- 強い倦怠感や高熱が何日も続く
他に明らかな病気が無く、これらの症状が出てきた場合には、血液内科がある医療機関をすみやかに受診してください。
2.HTLV-1関連脊髄症(HAM)
歩行や、尿・便の排せつが不自由になる神経性疾患です。
<HAM が疑われる症状>
- なんとなく歩きにくい、足がもつれる
- 走ると転びやすい
- 両足につっぱり感やしびれ感がある
- 尿意があってもなかなか尿がでない
- 残尿感がある、頻尿になる
- 便秘になる
HAMは早期診断・早期治療がとても大切です。
上記のような症状が出てきて持続する場合は、神経内科がある医療機関をすみやかに受診してください。
HAMの治療については有望な方法も開発されつつあります。
3. HTLV-1関連ぶどう膜炎(HU)
目の中に炎症が起こる疾患です。
<HUが疑われる症状>
- 眼の前を虫やゴミが飛んでいるようにみえる(飛蚊症)
- かすんで見える(霧視)
- 目の充血や視力の低下
上記のような症状が出てきて持続する場合は、眼科がある医療機関を受診してください。
この資料について
みなさまの不安や疑問を少しでも解消していただくために作成しました。
HTLV-1について、もっと知りたい、詳しく知りたい、と思われた方はぜひ本サイトの『HTLV-1基礎知識Q&A』のページをご参照ください。
本資料はPDFでもご利用いただけます。こちらのリンクからダウンロードしてご利用ください。
HTLV-1について
- イラストはHTLV-1キャリアを公表しているマンガ家・イラストレーターのハトコさんに作成していただきました
- 本資料は、2020年2月1日に日本赤十字社九州ブロック血液センターにて発行された「HTLV-1について(第2版)」を元に、HTLV-1情報ポータルサイト運営委員会により再構成の上掲載しております
- 最終更新日:2022年12月5日