HAMねっとについて
HAMねっとについて
HAMねっとはHAMの病態解明や治療法の開発を目指す研究です
研究代表者挨拶

HTLV-1関連脊髄症(HAM)は、1986年に鹿児島大学名誉教授 納光弘先生やDr. Gessain Aらによって提唱された進行性の痙性脊髄麻痺を症状とする疾患です。ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、1980年に成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)の原因として発見されたレトロウイルスで、当時は腫瘍ウイルスと考えられていたため、HTLV-1がATLとは全く異なる神経疾患をも引き起こすということは驚くべき発見でした。
多くの希少神経疾患がそうであるように、HAMもまた、症状を劇的に改善させる治療法や、症状の進行を止める根本的な治療薬は発見されず、患者さんはもとより医療者・研究者にとっても苦難の時代が続きました。このような状況を打破するため、HAM患者会が奮起し、その勇気ある粘り強い活動がついに国を動かし、2010年に国主導の「HTLV-1総合対策」が策定されました。しかしながら残念なことに、このような対策にもかかわらず、HAMの新規発症者数は未だ減少しておらず、最近の疫学調査では、これまで少ないとされてきた大都市圏での患者数も増加していることが明らかになっています。
難病の原因を解明したり、新たな治療法を確立したりするためには、患者さんの症状や検査結果などの臨床情報や、血液や髄液などの生体試料を効率的に収集し、医学研究や創薬へ応用していく取り組みが必要です。しかしながら、難病の患者さんは数が少ないため、研究に必要な臨床情報や生体試料を収集するまでには大変な時間がかかってしまい、研究がなかなか進まないことが問題となっています。この問題を克服するために、あらかじめ多くの患者さんの臨床情報や生体試料を収集し保管しておき、研究が計画された際、ただちに必要な臨床情報や生体試料を用いた研究を開始できるようにする取り組みに、患者レジストリがあります。
HAMについても、より多くのHAM患者さんの臨床情報や生体試料を収集し、HAMの病態解明や治療法の開発に役立てるために、HAM患者レジストリ「HAMねっと」を実施しております。一日でも早くHAM患者さんに有効なお薬を届けられるようにするためには、患者さん、医療従事者、研究者、一人でも多くの方のご協力が必要です。皆さまのHAMねっとへのご協力を心よりお願い申し上げます。
研究代表者
聖マリアンナ医科大学 内科学脳神経内科 主任教授
山野 嘉久