本研究について
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本研究について
私達が取り組んでいる「アグレッシブATLにおける予後因⼦の検討と個別化医療の確⽴を⽬的とした全国⼀元化レジストリおよびバイオレポジトリの構築」のための多機関共同前向き観察研究についてご紹介いたします。
ご挨拶
平素より本研究に多大なるご協力を頂き誠にありがとうございます。
この度、アグレッシブATLを対象としたレジストリ(患者登録システム)・バイオレポジトリ(検体収集システム)に関するwebサイトをオープンいたしました。私達が取り組んでいる「アグレッシブATLにおける予後因⼦の検討と個別化医療の確⽴を⽬的とした全国⼀元化レジストリおよびバイオレポジトリの構築」のための多機関共同前向き観察研究について紹介させていただきます。また、患者さんやATL診療に関わっておられる皆様に役立つ情報を発信・共有させていただければと考えております。
お陰様で、2021年8月の患者登録開始後、約1年間で計197例の患者さんを登録いただき、2022年3月の検体収集開始後、約5ヶ月間で計32検体を収集いただきました。今後ともご協力の程、何卒よろしくお願いいたします。
2022年9月7日
研究代表者
国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科
福田 隆浩
研究の名称
アグレッシブATLにおける予後因子の検討と個別化医療の確立を目的とした全国一元化レジストリおよびバイオレポジトリの構築
研究の目的
本研究の目的は、患者さんに情報(診断、治療内容、治療経過など)・試料(血液、口腔粘膜など)・データを提供いただくことを通じて、予後不良な希少がんであるアグレッシブATLを対象とした全国規模の患者登録システム(「レジストリ」といいます)および試料収集・保管システム(「バイオレポジトリ」といいます)を構築することです。ATLは希少がんであるため、少しでも多くの患者さんに協力いただき、またいただいた情報・試料・データを国内外の研究者に広く利用していただくために、レジストリ・バイオレポジトリの仕組みを構築する意義は高いといえます。さらに、いただいた情報・試料・データを詳細に解析することにより、アグレッシブATLの予後に影響する因子を明らかにし、患者さん個々の予後予測や治療選択に役立つマーカーを探索し、将来の患者さんの治療開発・予後改善につなげたいと考えています。
研究の背景
成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1: HTLV-1)というウイルスがT細胞というリンパ球に持続的に感染することによって起こる血液腫瘍です。ATLは、世界的にみると希少(まれ)な血液がんですが、日本は九州・沖縄地方を中心に患者さんの頻度が高いATL好発国です。ATLは、病変分布や検査所見により急性型・リンパ腫型・慢性型・くすぶり型の4つのタイプに分けられ、特にアグレッシブタイプ(急性型・リンパ腫型・予後不良因子を有する慢性型)は、ATLの約8割を占め予後不良とされます。
アグレッシブATLは、抗がん剤療法(多剤併用化学療法)のみで根治させることは困難です。同種造血幹細胞移植(同種移植)は、比較的若年(一般に70歳以下)の患者さんが適応となり、大量抗がん剤や全身放射線照射からなる「移植前処置」と、ドナー由来のATLに対する免疫力(「GVL効果」といいます)によって得られる高い抗腫瘍効果により、完治が期待できる治療です。しかし、ATLの移植後再発や合併症による死亡(非再発死亡)が高率に起こるため、長期的にATLの完治が得られる確率は3-4割にとどまります。一方、高齢者(一般に70歳以上)や合併症を有する患者さんに対しては、同種移植は基本的に適応にならず、また標準治療は確立されていません。近年、ATLに対する新規薬剤(モガムリズマブやレナリドミド等)が国内で用いられるようになりましたが、使用データはまだ十分ではありません。今後、アグレッシブATLの患者さんの予後をさらに改善するためには、同種移植成績の向上だけでなく、同種移植非適応の患者さんに対する治療法の確立、さらに新規薬剤や細胞療法などの様々な治療法の開発が必要です。
研究の対象となる方
過去6ヶ月以内にアグレッシブ(急性型・リンパ腫型・予後不良因子を有する慢性型)成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL)と初めて診断された16歳以上の患者さんです。
研究の期間
患者さんの登録期間は、2026年3月31日までです。研究を通じて得られたデータの解析期間を含む総研究期間は2031年3月31日までです。
研究の方法
①臨床情報の収集(アグレッシブATLレジストリの構築)
本研究に参加いただいた患者さんには、ATLの診断・治療内容・治療経過に関するデータを、登録時および1年毎にデータセンター(日本造血細胞移植データセンター)の管理するデータベースに登録させていただきます。本研究では、特定の治療法(抗がん剤療法や同種移植など)を規定したり、日常診療を越える追加の治療を行ったりするものではありません。
②臨床検体の収集と保管(アグレッシブATLバイオレポジトリの構築)
検体の採取に同意いただいた患者さんには(検体採取に関する同意は患者さんの任意で、本研究への参加に必須ではありません)、登録時に、血液検体20mLと口腔粘膜スワブ(ぬぐい)検体2本を採取させていただきます。登録後は、ATLの病勢評価等の必要に応じて、血液検体や口腔粘膜スワブ検体を追加で採取させていただきます。
③情報・試料・データの利用(レジストリ・バイオレポジトリの運用)
本研究を通じて得られた情報・試料・データの詳細な解析により、アグレッシブATLの予後に影響する因子を明らかにし、患者さん個々の予後予測や治療選択に役立つマーカーを探索し、アグレッシブATLに対する治療開発の促進、個別化医療(オーダーメイド医療)の実現につなげたいと考えています。
本研究の研究費と利益相反
臨床研究における利益相反とは、研究者が企業等から経済的な利益(謝金、研究費、株式等)の提供を受け、その利益の存在により臨床研究の結果に影響を及ぼす可能性がある状況のことをいいます。本研究は、令和5年度 日本医療研究開発機構委託研究開発費(革新的がん医療実用化研究事業)「アグレッシブ成人T 細胞白血病リンパ腫を対象とした全国一元化レジストリ・バイオレポジトリ研究(23ck0106860h0001;研究責任者:国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科 福田隆浩)」を資金源として実施します。この他に、特定の団体からの資金提供や薬剤等の無償提供などは受けておりませんので、研究組織全体に関して起こりうる利益相反はありません。